【浜松市】相続資料保管の勧め(過去の相続登記手続で不動産が漏れていたら)【司法書士】

相続関係書類

相続関係書類(戸籍謄本、印鑑証明書、遺産分割協議書など)保管の勧め

 司法書士は、相続登記などの手続に使用する戸籍謄本は、一旦、法務局に資料として提出しますが、それらの還付を受け、依頼者に全て返却します。これは、司法書士だけではなく、税理士等の他士業も一緒です。どこの提出先であっても、原本と一緒にコピーを提出すれば、原本は返却される運用がなされているためです。

 戸籍謄本等、住民票、印鑑証明書などの公的資料にくわえ、遺産分割協議書等の私文書ももちろん依頼者のお手元に返します。もし、万が一、それら資料の返却を受けていない場合は、手続を担当した各司法書士、税理士等にご確認頂くのが宜しいかと思います。

 返却方法は、各司法書士等によって様々ですが、当事務所では、上記画像のような厚紙で装丁してお返ししています。これは、綺麗にまとめてお返ししたいという意味合いと同時に、将来に渡って、こられ相続資料をしっかりと保存して頂きたいためでもあります。

 担当する司法書士、税理士等が、しっかりと相続人の意思確認を行い、相続財産なども調査すれば、将来、何か問題が発生することは通常ありません。そのため、別途金融機関、証券会社又は行政機関などの手続がない限り、これら相続資料を使用する場面は発生しませんが、相続資料のうち、特に遺産分割協議書などの私文書は、相続人間の意思確認を証明する法的資料になりますので、手続きが問題なくスムーズに運んだ場合であっても、不動産の権利証と同じように、保管されるべきことをお勧めします。また、戸籍謄本なども、ご親族で集まった時などに、家系を振り返ったり、故人を懐かしむ契機にもなり得ますので、大切に保管して頂くのがよいでしょう。

過去の相続登記で土地が漏れていた場合

 実は、最近、何件か、20年以上前の過去の相続手続きにおいて、本来その際に相続登記すべきであった土地が漏れており、当事務所に依頼され方が数名おりました。その当時の担当司法書士が何故その不動産だけを手続きしないでいたのかは、今となっては不明ですが、何かの際に、未手続の土地がある旨が判明し、令和6年4月から相続登記が義務化になることを懸念して、当事務所に相談に来られたのです。

 うち1件は、現在の登記名義人(不動産の登記記録上の所有者)が、大正8年に取得して以降手続きをしていない不動産でした。大正8年とは、今から約100ほど前ですので、その登記名義人も、既にお亡くなりになっているのは明らかでした。ご依頼者に確認すると、その登記名義人は、ご依頼者の曽祖父にあたる方とのことでした。

 戦後、明治期の民法は改正され、お亡くなりになった時期により、若干手続きが異なります。また、相続は、直系卑属(子供、孫)へと相続していくことが基本ですので、子孫たる相続人だけで膨大な数になることも、当然に予想されました。

 そのため、当初相談を受けた際には、「これは相当な時間を要しそうだ。」と感じたのですが、ご依頼者の方に、何か資料をお持ちかどうかを尋ねたところ、昭和50年当時の資料があるとのことでした。確認させて頂くと、その当時の司法書士から返却を受けた相続資料で、戸籍謄本、印鑑証明書などが綺麗に装丁されておりました。

 結論からいうと、この保管資料があったおかげで、一から戸籍謄本等を取得し、相続人を調査する必要もなく、手続きはスムーズに進み、無事登記も完了いたしました。もし、この保管資料が無ければ、おそらく今頃もまだ、業務を遂行中で、とても終わりが見える段階とはなっていないでしょう。

 特に、今回、助かったのは、当時の相続人が作成した各私文書です。私文書とは、「遺産分割協議書」や「相続分譲渡証明書」又「特別受益証明書」などのことです。こうした私文書は、通常、実印で押印し、印鑑証明書を添付します。法務局に提出する際にも、印鑑証明書の原本を提出しなければなりません。印鑑証明書は、過去のものであっても、また、既にお亡くなりになっている方のものであっても、使用できます。

TIPS

過去に作成した遺産分割協議書等の私文書は、相続登記手続で使用できます。

また、その際に添付する印鑑証明書も過去に発行されたものでも使用できます。

さらに、戸籍謄本等の公的文書も、過去に発行されたものでも使用できます。

 公文書である戸籍謄本等は、時間は要しますが、仮に紛失していても、あらたに取得することができます。しかし、こうした私文書については、紛失してしまうと、またあらたに作成することは、そもそもできません。何故なら、当時の方のうち、お亡くなりになっている方も多いためです。仮に、ご存命であっても、再度、こうした書類に署名押印をしてもらうことは簡単ではありません。

 

 大抵、こうした未手続の土地は、山林や農地であることが多く、宅地の場合であっても小さな面積で、かつ、非課税であるため、固定資産税も発生せず、長期間に渡って所有しているとすら知らずに、そのままになっていることが多いのが実情です。

 さらに、仮にそうした土地があることが判明しても、税金が発生しているわけでもなく、日常生活には特段影響もないことから、そのままにしてしまう方もいます。しかし、時間が経てば経つほど、相続関係は複雑となり、また、過去の資料等の紛失の恐れも高まります。よって、できるだけ早めにお手続きをされることをお勧めします。

 もし、明治、大正、昭和初期以降の未手続の土地があった場合は、まず、一旦、過去の相続資料の有無をご確認下さい。その有無により、手続きの費用、期間が大きく異なります。

 

TIPS

相続登記手続が未了の土地があることが判明した場合は、まず、過去の相続資料があるかをご確認下さい。