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相続税の基本知識

 相続税の基本的な構造について記載してあります。司法書士は相続税の申告をすることができません。したがって、実際の申告が必要な場合は、当事務所が提携している税理士をご紹介いたします。

目次

1.相続税が課税される人

2.相続税の課税対象

3.基礎控除とは

4.配偶者の税額軽減制度

5.生前贈与財産の加算

6.死亡保険金(死亡退職金)の計算

7. 小規模宅地の特例とは

8.事例による相続税の計算

9.財産の評価方法(土地、株式)

10.その他相続における税務(遺産分割など)

1.相続税が課税される人

 相続税は、相続した時に課税されるものですが、相続人でない場合にも相続税が課税されることがあります。それは、以下の場合です。

相続税の課税対象者

相続人

 相続財産を承継した際に課税されます。

受遺者

 受遺者とは、遺贈を受けた人のことです。遺贈は、相続人以外の第三者に対してもすることができますが、その場合、受遺者に対して相続税が課されます。遺贈が相続人に対してされた場合には、相続税を計算する際の基礎控除(3,000万円+相続人の数×600万円)の計算における相続人の数に受遺者は含まれますが、相続人以外の第三者に対して遺贈が行われた場合には、基礎控除計算上の相続人には含まれません。また、相続税は、配偶者又は血族一親等(親からみて子まで、また子からみて親など)以外の者に対しては、2割加算されますので留意する必要があります。

受贈者

 受贈者とは、贈与を受けた人のことです。相続税法では死因贈与で受贈者となった人にも相続税が課されると規定されています。

2.相続税の課税対象

 相続税が課される財産は、被相続人から承継した財産ですが、民法上は相続財産ではなく相続人固有の財産とされるものであっても、相続税法上では課税の対象とされるものがあります。主なものは以下の生命保険金および死亡退職金です。

課税対象となるもの

相続財産

 被相続人から承継する現預金、有価証券、不動産、自動車などです。

 なお、相続財産であっても、墓所、霊廟及び祭具等は非課税財産とされています。

生命保険等

 被相続人が負担していた保険料に係る保険金(被保険者が死亡した父で、保険金の受取人が子の場合など

死亡退職金

 被相続人の死後3年以内に確定したものは、相続税の課税対象となります。

3.基礎控除とは

 相続税の計算において、各種の控除制度がありますが、基礎控除とは、相続財産の課税価額から、条件に関わらず絶対的に控除できる部分です。計算式は以下のとおりです。

基礎控除

3,000万円+法定相続人の数×600万円

基礎控除における法定相続人とは

 基礎控除においては、法定相続人の数が重要となりますが、相続放棄や相続欠格等により算入できるかどうかの可否が異なります。詳しくは以下のとおりです。

区分 基礎控除算入の可否
相続人
相続放棄者
相続欠格者 ×(但し、代襲者いれば算入)
廃除者 ×(但し、代襲者いれば算入)
受遺者 △(対相続人〇、相続人以外×)
養子 〇但し2人まで(実子いるとき1人まで)

TIPS

法定相続人の数をもとに計算されるもの

  • 基礎控除額
  • 生命保険金の非課税限度額
  • 死亡退職金の非課税限度額
  • 相続税の総額を計算する際

基礎控除に算入する法定相続人の数は、上記生命保険金等の計算に際しても、同じ数をもとに計算されます。

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4.配偶者の税額軽減制度

 配偶者の税額軽減制度は、配偶者が取得した遺産が一定の場合まで相続税がかからないという制度です。これは、家庭の財産とは夫婦で一緒に稼ぎ、共有しているのだから、長年連れ添った夫婦間であれば、相続税を課さないという国の方針によるものです。

配偶者の税額軽減制度

配偶者については、次のいずれかのうち多い金額まで相続税はかかりません。

  • 1億6,000万円
  • 法定相続分相当額

ただし、この適用を受けるためには、申告が必要です。また、遺産分割や特定遺贈により、取得財産が特定されていない場合にも適用がありません。その場合は、相続税の申告期限までに遺産が未分割の場合は、3年以内の分割見込書を添付すれば、3年以内に分割が確定した時点で適用を受けることが可能です。

5.贈与財産の加算

 相続税の計算においては、生前、被相続人から贈与を受けている場合は、その贈与財産を加算する必要があります。

贈与財産の加算

加算される贈与財産

3年以内に贈与された財産の全て。贈与税が発生したかの有無に関係なく加算。但し、以下の加算されない贈与財産を除きます。

加算されない贈与財産

・配偶者控除による特例を受けた贈与のうち、その配偶者控除に相当する金額

・直系尊属から贈与を受けた住宅取得資金、教育資金、結婚子育て資金のうち、非課税枠の適用を受けた金額

6.死亡保険金(死亡退職金)の計算方法

 死亡保険金については、前述のとおり、相続税法上では、相続税の課税対象となりますが、計算方法は以下のとおりとなります。

死亡保険金の計算方法

非課税限度額

500万円×法定相続人の数

計算式

① その相続人が受け取った保険金額-非課税限度額

② その相続人が受け取った保険金額/全ての相続人が受け取った金額

③ ①×②

配偶者の生命保険金4,000万円、子の生命保険金1,000万円とします。

相続人は2人です。

①4,000万円-1,000=3,000万円

②4,000万円/5,000万円=0.8

③2,400万円

2,400万円が配偶者の課税価格に参入されます。

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7.小規模宅地の特例とは

 被相続人の事業の用又は居住用の用に供していた宅地等で、一定の要件を満たすもののついては、課税価格が減額される制度です。主な内容は、以下の表のとおりです。

 小規模宅地に関する特例の適用を受けるためには、申告期限までに遺産が分割され特定されていなければなりません。なお、配偶者の税額軽減制度と同様に3年以内の分割見込み書を添付し、分割時に特例を受けることは可能です。

被相続人の事業の用に供されていた宅地
要件 相続税の申告期限まで事業を承継し、引き続き事業を営むこと

相続税の申告期限までその宅地を所有していること
減額割合 80% 又は50%(第三者への貸付地)
限度面積 400㎡ 又は200㎡(第三者への貸付地)
被相続人と生計を一にする親族の事業の用に供されていた宅地
要件 相続税の申告期限まで引き続き事業の用に供していること

相続税の申告期限までその宅地を所有していること
減額割合 80% 又は50%(第三者への貸付地)
限度面積 400㎡ 又は200㎡(第三者への貸付地)
被相続人の居住の用に供されていた宅地
要件

以下の者が取得し、各要件を満たすこと
①配偶者

②同居の親族(相続税の申告期限まで引き続き所有し、引き続き居住すること)

③同居してない親族(被相続人に配偶者がいないこと。相続の開始直前に被相続人と同居していた相続人がいないこと。3年内に自己所有又は親戚等所有の家屋に居住したことがないこと。今住んでる住居を過去において所有したことがないこと。その宅地を相続開始時から相続税の申告期限まで引き続き所有すること)

減額割合 80%
限度面積 330㎡
被相続人と生計を一にする親族の居住の用に供されていた宅地
要件

以下の者が取得し、各要件を満たすこと
①配偶者

②生計を一にしていた親族(相続開始前から相続税の申告期限まで引き続きその家屋に居住すること。その宅地を相続税の申告期限まで所有すること)

減額割合 80%
限度面積 330㎡

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相続税の計算方法

 以下のフローを参考にして頂くと、ご自身の相続税額の目安が計算できます。相続税には、基礎控除がありますので、基礎控除を超えなければ相続税が発生しません。まずは、基礎控除額を超えるかどうかを判断されることを始められるとよいと思います。また、基礎控除を超えた場合であっても、配偶者には、配偶者税額軽減制度があり、1億6千万円または法定相続分相当額までは無税となります。

 相続財産の全てが基礎控除以下又は配偶者の税額軽減制度範囲で配偶者のみが相続するのであれば、相続税の計算は不要となります。但し、以下の事例のように配偶者は1億6千万円以下の財産取得であっても、全体として基礎控除を超え、配偶者以外が財産を取得する分もあるのでれば、相続税が発生します。

具体的事例による相続税計算フロー

 ご自身の相続税の目安を計算される際ですが、不動産については、便宜、固定資産評価額で計算されて問題ありませんが、現実には、土地については、路線価方式等で計算され、かつ、小規模宅地の特例が適用になる場合もあります。小規模宅地特例については要件が細かいので税理士に相談されることをお勧めしますが、ご自身で確実に適用されると判断できるのであれば、その価額を元に計算してみてください。また株式等については、上場会社であればは、基本は相続開始日の終値によります(例外規定もあります)が、便宜、計算される時点の終値でよいかと思います。

 

設例

相続人

 配偶者、子A、子B、子C

財産

 現金1億6,100万円及び債務3,000万円

遺産分割内容

 配偶者 7,100万円

 子A 5,000万円及び債務

 子B及びC 2,000万円

その他

 配偶者に死亡生命保険4,000万円

 1年前に子Aは、被相続人から3,000万円の贈与を受けています

 子Aは贈与税1,195万円を納付済とします

 葬式費用100万円を配偶者が支払いました

STEP1 課税価格の算出
各人が取得する財産の価額を合計します。

配偶者 
 9,000万円(7,100+2,000-100)
子BC
 各2,000万円
子A
 5,000万円(5,000-3,000+3,000)

・配偶者に生命保険2,000万円加算
・配偶者に葬式費用100万円減額
・子Aに生前贈与3,000万円加算
・子Aに債務3,000万円控除
STEP2 課税価格を合計する
各人の課税価格を合計します

1億8,000万円
(9,000+2,000+2,000+5,000)
STEP3 基礎控除を控除する
1億2,600万円
(1億8,000円-5,400万円)

基礎控除:3千万+相続人1人あたり6百万
STEP4 法定相続分を乗ずる
配偶者
 6,300万円
子ABC
 各2,100万円
(1億2,600万円×各法定相続分)
STEP5 相続税率を乗ずる
配偶者
 1,190万円
 (6,300万×30%-700万円)
子ABC
 各265万円
 (2,100万×15%-50万円)
相続税の税率は国税庁のHPをご覧ください
STEP6 相続税の総額を計算
1,985万円
(1,190万円+(3×265万円))
STEP7 課税価格合計に対する各人の課税価格の按分割合を計算
STEP2の課税価格合計は1億8,000万円
これに対するSTEP1の各人の課税価格按分を計算
配偶者
0.5
(9千万/1億8千万)
子A
0.28
(5千万円/1億8千万)
子BC
0.11
(2千万円/1億8千万)
STEP8 相続税の総額に按分割合を乗ずる
STEP6の相続税総額に按分割合を乗じます
配偶者
992.5万円
(1,985万円×0.5)
子A
555万円
(1,985万円×0.28)
子BC
各218.35万円
(1,985万円×0.11)
STEP9 最終の税額(納付額)
-各種控除等を適用
配偶者
0円
配偶者税額軽減適用により無税
子A
0円
贈与税額控除適用により無税
子BC
各218.35万円

・子Aは、生前納付済の贈与税1,195万円を控除することができます。マイナスとなりますが、納付済の贈与税は還付されません。



TIPS

基礎控除以外の控除は、最後に計算する

各種控除は、最終の各人の税額から控除し、納付額が決まります。贈与税額控除以外には、以下の控除があります。

  • 未成年者控除
  • 障害者控除
  • 数次相続控除
  • 外国税額控除

相続税の2割加算制度

 配偶者・1親等内の血族以外の者が相続税を納付する場合は、2割加算されます。上記の例では、子は1親等内の血族であるため2割加算されませんが、2親等である孫への遺贈や、第三者への死因贈与などの場合は、2割加算されます。

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財産の評価方法

 相続財産の評価については、相続税法上は「時価」によると定められているのみですが、実務上は国税庁による財産評価基本通達により、細かく評価方法が定められています。

不動産

 建物については、固定資産評価額がそのまま相続税の課税価格となります。固定資産評価額は、市町村で固定資産評価証明書を取得すれば、その評価額が分かります。また、毎年送られてくる固定資産税の納付書にも記載があります。

 土地の評価は路線価方式又は倍率方式及び宅地比準方式により計算します。土地も固定資産評価証明書に記載がありますが、その金額とは異なるので注意が必要です。

 路線価方式、倍率方式の計算方法は、国税庁のHPに専用のページがありますのでそちらで見ることができます。

 ページに入ると、日本地図があり、市町村を選択していくと、不動産のある場所の白地図が出てきます。路線価図といわれる地図です。路線価図には、道路部分に数字が記載されています。

 例えば、当事務所の場所の路線価図を引くと、前面道路部分に「82E」とありますが、これは、当事務所がある土地は㎡あたり82,000円で評価できることを示しています。右側の「E」は、借地権割合を示すものですので、自己所有地の場合であれば無視してかまいません。

 地域によっては、この地図がない場所もあります。その場合に用いるのが倍率方式及び宅地比準方式と呼ばれる方式です。倍率方式では、固定資産評価額をもとに金額を算出します。また、宅地比準方式では、その土地が宅地となった場合の価額から宅地造成費を控除した価額が課税価格となります。

 土地の評価の計算については、専門的に知識が必要となります。路線価図がある場所であっても、角地等で2つの道路に接している場合もあります。但し、固定資産評価額が一つの目安にはなりますので、まずは固定資産評価額で計算をし、相続税が発生する可能性がある場合には、税理士等の専門家に依頼をされると宜しいと思います。当事務所でも提携の税理をご紹介致します。


 

上場株式

  上場株式は、相続開始日(死亡日)の終値により評価されるのが原則です。但し、以下の3つの価額のうち、最も低い価額を超える場合には、その最も低い価額により評価します。

 ①死亡日の月の終値の平均価額

 ②死亡日の前月の終値の平均価額

 ③死亡日の前々月の終値の平均価額


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その他相続に係わる税務

遺産分割における税務

 遺産分割には、現物分割、代償分割、換価分割、共有分割の各類型がありますが、分割の方法により、課される税金が異なるため注意が必要です。

現物分割、共有分割
 相続税が課されます。
現物分割

 相続税又は譲渡所得税が課されます。

<代償財産を負担した者>

ア)相続税

取得した財産の価額から交付した代償財産の価額を控除して課税価格を計算します

イ)譲渡所得税

代償財産が金銭である場合は、譲渡所得税課税は発生しません 代償財産が金銭以外の場合は、譲渡所得税が発生します

<代償財産を取得した者>

ア)相続税

代償財産に対して相続税が課されます

換価分割

 相続税又は譲渡所得税が課されます。

ア)相続税

換価した遺産の取得割合分相続税評価額に対し相続税が課されます

イ)譲渡所得税

各相続人に換価した遺産に対し譲渡所得税が課されます。

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限定承認における税務

 単純承認(普通の相続)の場合、所得税法では譲渡所得税の課税は行わずに、相続人が取得費と取得時期を引き継ぐとされています(課税の繰り延べ)
したがって、単純承認においては、譲渡所得税の課税は、単純に財産をそのまま引き継ぐ限り、発生しません。

 しかし、限定承認においては、被相続人から相続人に対し、相続開始時の時価で、譲渡があったものとみなされるため、被相続人に譲渡所得税の納付義務が発生しますが、被相続人は死亡して支払うことはできず、その納付義務を引き継いだ相続人が納付することになります。

 この譲渡所得税は、相続開始のあったことを知った日の翌日から4ヶ月以内に税務署に申告しなければなりません。

 なお、譲渡所得税は、被相続人の財産の限度を超えて負担することはありませんので、もともとあった自分の財産をもって税金を支払う必要はありません。

 また、譲渡所得税の計算にあたり、マイホームを売った時の軽減税率(10年以上所有した家屋を売る場合に、譲渡所得6,000万円以下の場合は10%)、マイホームの買い替え特例(マイホームを買い換えた際に発生する譲渡所得税を繰り延べできる)、マイホームを売ったときの特別控除(譲渡所得から3,000万円控除)の特例は、適用されないことも留意しておく必要があります。これは、これら特例の適用は、特別の関係のある者(配偶者、血族)に対するものを除くと規定されているからです。

相続放棄における税務

 相続放棄をすると、当初から相続人ではないとみなされますので、相続財産を承継しない以上、相続税の課税は発生しないのが原則です。しかし、相続放棄者であっても、生命保険金の受取人になった場合、遺贈・死因贈与を受けた場合は相続税が課税されます。

内縁の妻が財産を取得した場合

 被相続人に、相続人がいない場合、特別縁故者として家庭裁判所に請求することにより、財産の分与を受けることができます。その場合、相続税法では、相続税が課されます。基礎控除において、相続人の×600万円は適用されず、3,000万円の基礎控除のみ適用となります。また、配偶者、一親等の血族以外の者にあたるため相続税の2割加算がされます。

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