【浜松市】相続手続で必要な書類

 不動産の相続登記に限らず、金融機関、証券会社、その他行政機関などの手続において、被相続人(亡くなった方)の戸籍謄本などの提出を求められます。

 必要な書類は、どの手続きであっても、ほぼ共通のものが要求されます。そのため、同じ書類を2~3通程度取得又は作成しておくと、並列的に手続を行うことができるため便利です。

 そうした必要書類のうち、有名なものとして、戸籍謄本等があります。また、印鑑証明書の提出を求められる場合もあります。手続をされる方は、手続先の求めに応じて、そうした戸籍謄本等を取得することが常かと思いますが、何故そのような書類が必要になるのかを知っておくと、よりスムーズに手続を行えることでしょう。

 以下に、相続手続で必要な書類等を記載します。また、何故その書類が必要になるかの理由も、合わせて説明いたします。

 

 

必ず必要な相続書類

必ず必要となる書類

  • 遺産分割協議書(又は遺言書)
  • 印鑑証明書
  • 被相続人の住民票の除票(又は戸籍附票)
  • 被相続人の出生~死亡までの戸籍謄本等
  • 相続人の戸籍謄本(抄本でも可)

 戸籍謄本等の公的書類については、発行日から何か月以内という決まりはありません。印鑑証明書についても同様です。唯一、相続人の戸籍謄本については、被相続人の死亡日以降に取得したものが必要となります。

遺産分割協議書(又は遺言書)

 遺産分割協議書は、相続人全員で、相続財産の帰属先を決める際に作成する書類です。遺産分割協議をするまでは、遺産を誰が取得するかが定まっていない未確定の状態となります。なお、遺産分割協議は、相続人全員で行う必要があります。

 未確定の状態のままだと、各手続先は、誰が遺産を取得するかを判断できないため、相続人に対して、遺産分割協議を行うように求め、相続人は、協議の結果を記載した遺産分割協議書を作成することとなります。

 遺産分割協議書には、「長男〇〇がどこどこの不動産を取得する」、「長女△△がどこどこの金融機関の預貯金を取得する」など、相続財産を具体的に特定し、それを相続人の誰が取得するかを記載していきます。

 決まった書式はありません。誰が死亡し(誰が被相続人なのか)、誰が何の財産を取得するのかが、当事者はもちろん、他の誰が見ても分かるのであれば、書き方は自由です。また、いつその協議を行うかも自由です(但し、数年後に相続登記が義務化されますので、結果的に、この遺産分割協議も速やかに行う必要が生じます)。

 通常は、書類の末尾に、相続人全員が署名し、実印にて押印します。

 一部金融機関の手続においては、金融機関所定の書式に、この遺産分割協議書と同様に相続人全員が署名及び実印にて押印することにより、手続を行える場合もありますが、相続手続においては、この遺産分割協議書がまず必要となる(作成する必要がある)と考えて間違いはないでしょう。当事務所でも、ご要望があれば、遺産分割協議書作成のお手伝いをさせて頂きます。

 ところで、遺言書がある場合もあります。遺言書には、遺産分割協議書と同様に、誰がどの遺産を相続するなどの記載があることが通常です。遺言書は、遺言書を作成した方(つまり、亡くなられた方)が、死亡した時点から効力が発生します。相続人全員で、遺産分割協議を行わずとも、死亡の時点から、遺言書に記載された遺産は、遺言書の記載にしたがって、各相続人に帰属することとなります。

 遺言書に、例えば、「長男〇〇がどこどこの不動産を相続する」と記載されていれば、長男は、上記の遺産分割協議を経ることなく、当然に、その不動産を取得することとなります。

 こうした場合には、遺産分割協議書に代えて、遺言書を各手続において使用すれば足ります。しかし、遺言書に記載のある財産に関する手続のみです。不動産について記載されていれば、相続登記の際には、その遺言書を使用し、金融機関の預貯金について記載されていれば、金融機関の手続においてもその遺言書を使用します。

 しかし、遺言書に記載のない財産がある場合には、その財産の帰属先を決めるために、別に遺産分割協議を行う必要が生じます。例えば、遺言書に、「長男〇〇に全財産を相続させる」との記載があれば、その遺言書だけで、全ての手続を行うことができますが、具体的な財産が列挙され、個別にその帰属先が指定されている遺言書などで、実際には、そこに記載された財産以外にも遺産があったような場合がこれに当たります。

 いずれにしても、考え方としては、どの手続においても、遺産の帰属先を定めた書類(遺産分割協議書や遺言書)が必要となることを覚えておかれるとよいと思います。

相続人の印鑑証明書

 遺産分割協議書には、実印にて署名押印することが通常であるため、実印にて押印されたことを証するために、印鑑証明書も一緒に提出することを求められます。

 遺言書がある場合は、印鑑証明書は必要ないように思われるかもしれませんが、金融機関によっては、所定の書式に押印する際に、実印にて押印することを求められる場合があります。

 印鑑証明書の期限については、特段の決まりはありません。各手続先の求めに従うこととなります。ちなみに、相続登記の際に、遺産分割協議書及び印鑑証明書を法務局に提出しますが、印鑑証明書の発行日の制限はありません。何年前のものでも使用可能です。

被相続人の住民票の除票(又は戸籍附票)

 住民票の除票とは、亡くなられた方の住民票のことです。除票と題されているのは、亡くなられたために住民票台帳から除かれたというだけで、様式は通常の住民票と同じです。

 相続人であれば、市役所等の役場で取得できます。この際、この被相続人の住民票の除票に、本籍地を記載してもらうことを忘れないようにして下さい。

 最近、個人情報保護の兼ね合いから、住民票に住所以外の情報を記載するためには、その旨をあえて申告する必要が増えてきています。何も言わずに取得すると、本籍地の記載がない、住所、氏名、生年月日及び前住所のみが記載された最も簡略化された住民票が発行されます。なお、住民票にはマイナンバーも記載できますが、マイナンバーは記載しないようにしてください。マイナンバーを記載してしまうと、かえって各手続先がその住民票の受領を拒否する可能性があります。

 この住民票の除票が必要となる理由ですが、多くの手続先では、住所が本人(被相続人)の特定要素の一つになっていることが挙げられます。

 住民票の除票を見ると、そこには、住所、氏名、生年月日、本籍が記載され、次項で説明する戸籍謄本等と連動することで、各手続先は、各手続先に記録された人間が死亡した事実を確認できるのです。

 戸籍附票とは、生前何度も住所を移転している方や、役所の住民票データ保管期間(住民票のデータ保管期間は年々短くなっており、自治体によっては5年以上前の住民票除票を取得することができない場合もあります)を超えて手続を行う際に、住民票と同様に住所を証する書類として取得する書類です。

 住民票の除票には、前住所も記載されます。したがって、生前の各手続先に届けてある住所が、前住所までの記載でカバーできるのであれば、住民票の除票で足りますが、数回以上住所移転をしており、各手続先で記録されている被相続人の住所が古い住所の場合などは、その古い住所から死亡時の住所までを繋げる必要が生じます。

 戸籍附票には、これまでの住所の変遷が全て記載されるため、生前頻繁に住所変更していた場合などは、初めから、こちらの戸籍附票を取得する方がよいかもしれません。なお、この戸籍附票も、自治体によっては、10年程度でデータを消去する場合もあるようです。そのような場合は、また、別の方法がありますが、その場合は司法書士にご相談下さい。

 

被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等

 戸籍には、戸籍謄本、除籍謄本、改正原などの各種呼び方が異なる書類がありますが、そうした名称については、全く気にする必要がありません。とにかく重要なことは、出生~死亡までの記載がある戸籍謄本等を収集することです。

 収集といっても、市役所等に、「相続のため、被相続人の出生~死亡までの戸籍謄本等を全て欲しい」と伝えれば、一度の手続で、市役所等が被相続人の出生から死亡までの戸籍等を発行してくれますので、難しくはありません。

 但し、生前に転籍(例えば、浜松市→磐田市)などしている場合は、各自治体毎に取得請求手続が必要となります。遠方の場合は、郵送でも可能です。どの自治体のHPでも、郵送請求の方法の説明がありますので、時間はかかるかもしれませんが、同様に難しくはありません。

 被相続人の戸籍謄本等を取得する一番の理由は、その被相続人の死亡の事実を確認するためです。また、出生から死亡までの記録が必要となる理由ですが、これは、主に、被相続人の子供の有無を確認するためです。配偶者は常に相続人となりますが、血族間において、第1順位の相続人は子供となります。過去に婚姻歴があり子供がいた場合や、婚姻歴がなくても子供を認知した場合であっても、出生から死亡までの戸籍等を取得することでその事実が判明します。

 配偶者や子供がいない場合は、第2順位の相続人として、親が登場します。また親もいなければ、今度は兄弟が相続人となりますが、こうした場合にも、出生~死亡までの戸籍謄本等を取得することで、父母の情報や兄弟の情報についても、確認できるのです。

相続人の戸籍謄本(抄本でも可)

 相続人の戸籍謄本(抄本でも可)も、各手続において、必ず必要となります。

 被相続人の出生~死亡までの戸籍謄本等を取得すると、そこには各相続人の記載もあるため、あえて、今現在の相続人の戸籍謄本を取得しなくてもよいように思えます。

 民法において「廃除」という制度があります。「廃除」とは、相続人に著しい非行があった場合などに、被相続人が生前に家庭裁判所に請求することで、相続人を廃除することができる制度です。廃除されると、その相続人は、相続することができなくなります。

 また、廃除されると、相続人の戸籍にその旨が記載されます。そのため、その確認のためにも、相続人の現在の戸籍謄本の提出を求める必要があるのです。

 通常、各手続において、提出を求められる戸籍謄本等には、その発行日から何か月以内という縛りはありません。被相続人の戸籍謄本等であれば、何年前のものでも使用できます(もちろん、最後の戸籍謄本又は除籍謄本には、死亡の事実が記載されている必要があります)

 しかし、相続人の戸籍謄本(又は抄本)に限っては、被相続人の死亡後に取得したものが必要となります。死亡前に取得した戸籍謄本の場合、その発行日から死亡までの間に廃除された可能性があるからです。

 ところで、「廃除」は、遺言によっても廃除できます。民法では、死亡後遅滞なく「廃除」の手続をしなければならないとされています。遺言による廃除も、その手続が完了すると、相続人の戸籍にその旨が記載されます。したがって、各手続において、本来であれば、相続人の戸籍謄本は、被相続人の死亡後ある程度経ってから発行されたものを求められるべきですが、実務上、さすがにそこまで拘って要求されることはありません。被相続人が死亡した後の日付の戸籍であれば、まず問題ありません。

場合により必要となる相続書類

 上記の書類は、相続手続において、必ず必要となりますが、状況に応じて必要となる書類もあります。

被相続人の子などの出生~死亡までの戸籍謄本等(孫が相続する場合)

 本来相続するはずだった子供が、親より先に死亡しているため、その子供に代わって孫が親を相続することがあります。これを「代襲相続」といいます。

 この場合、前項の必要書類一式に加えて、先に死亡している子供の出生~死亡までの戸籍謄本等が必要となります。孫は、子供の代わりに親を相続することとなるのですが、孫は、孫全員が相続人となるため、その全員の存在を明らかにするために、子の出生~死亡までの戸籍謄本等が必要となるのです。

親の出生~死亡までの戸籍謄本等(兄弟が相続する場合①)

 兄弟は、第3順位の相続人です。よって、被相続人に、第1順位の子供がおらず、第2順位の親も既に死亡している時に、初めて兄弟は相続権を持ちます。

 この場合、被相続人の出生から死亡までの戸籍を取得すると、子供がいないことがまず判明します。次に明らかにすべきは、親が死亡している事実となります。よって、親の死亡の記載がある戸籍謄本等を取得する必要があるのです。また、兄弟の存在を確認するために、親の出生~死亡までの戸籍謄本等も必要となります。

 親が死亡していても、その親(つまり祖父母)が健在であれば、その祖父母が兄弟に先立ち相続することとなります。そのため、場合によっては、祖父母の死亡の事実のある戸籍謄本等を求められる場合もあります。

被相続人の子などの出生~死亡までの戸籍謄本等(兄弟が相続する場合②)

 上記、孫が相続する場合にも必要となった、被相続人の子供の出生~死亡までの戸籍謄本等は、兄弟が相続する場合にも必要となることがあります。

 被相続人に子供がおり、本来は、その子供が相続する予定であったが、その子供が、被相続人より先に死亡しており、その子供の子供(孫)がいない、又は、その子供の子供(孫)も先に死亡していたなどの事情により、兄弟が相続する場合などが考えられます(元々子供がいなければ、必須の書類である被相続人の出生~死亡までの戸籍謄本等があれば事足ります。)

 直系血族である子や孫、さらに曾孫は存在する限り、どこまでも兄弟に先立ち優先して相続します。そのため、兄弟が相続する際には、そうした直系血族がいないことを証明する必要があり、そのために、子や孫の出生~死亡までの戸籍謄本等が必要となります。

被相続人の子などの出生~死亡までの戸籍謄本等(親が相続する場合)

 親が相続する場合も、被相続人の子供の出生~死亡までの戸籍謄本等が必要となります。

 親は、第2順位の相続人であり、第1順位の相続人である被相続人の子供(親にとって孫)がいないときに限って、相続人となります。つまり、もし、子供(孫)がいれば、相続に親が登場することはありません。親が相続人となる場合は、被相続人に子供がいないか、又は、いたとしても、事情により死亡している場合に限られます。

 そのため、被相続人に子供がいた場合は、その子供が死亡している事実を証明する必要があるのです。また、兄弟が相続する際と同様に、被相続人の子や孫、さらに曾孫は存在する限り、どこまでも親に先立ち優先して相続します。そのため、そうした直系血族である子や孫がいないことを全て証明する必要があります。

不動産を取得する相続人の住民票

 この書類は、相続登記をする際に必要となります。その他金融機関、証券会社などの手続においては、必要とされる場合とされない場合が、各会社によって異なります。

 不動産の相続登記をする際には、相続する方の住民票を法務局に提出する決まりとなっています。

 上記のように、相続状況によって、追加で必要となる書類があります。

 戸籍謄本等は、①子供②親③兄弟の順で相続権があるため、優先する相続人の有無を確認するための戸籍謄本等が必要となると覚えておかれるとよいかと思います。

 相続が開始すると、死亡届から数日で死亡の事実が戸籍記録に反映されます(市役所等の事務の関係上、日数がかかり、死亡届当日に反映されることは少ないようです)。1週間程度経てば戸籍に反映されるはずですので、その後上記の戸籍謄本等を取得しておくと、各手続がスムーズに行えるかと思います。

 上記以外にも場合によっては、「不動産の固定資産評価証明書」、「不動産の登記簿謄本」が必要になる場合もあります。相続登記を司法書士に依頼される場合であれば、取得する必要はありません。司法書士側で調査確認するからです。もし、ご自身で相続登記をされるのであれば、念のため取得しておく方が宜しいかと思います。

 さらに詳しい相続知識を知りたい方は、こちらのページをご覧ください。

   「相続の基本知識」

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