司法書士をより身近に感じていただくために

 司法書士というと、何を思い浮かべられるでしょうか。

 司法書士が、主に法務局で管理される「登記手続」の担い手であることは、比較的広く知られているのかもしれませんが、一般の方にとっては、「登記手続」自体が、人生においてそれほど頻繁に発生するものではなく、マイホームを購入した際や相続による名義変更の際に関わる程度のものであることもあって、そのことすらあまり知られてないように感じることがあります。なんとなく「法律的な仕事をする人?」といような抽象的な印象しか持たれていないのが実情かもしれません。

司法書士ができること

 司法書士が、その資格において、業務として行うことができることは、司法書士法等の法令によって、定められています。法定されていない業務も行うことはできますが、他の法律で制限されている業務については、行うことができません。例えば、税務関係手続は、原則、税理士、会計士しか行うことはできませんし、裁判や紛争の代理は、弁護士(※以下⑤参照)しかすることができません。

 他士業しかできないと定められている業務がある一方、司法書士のみが行うことができるとされてるものもあります。

① 登記又は供託に関する手続きについて代理すること

 先にも述べた登記に関する手続きや、供託金を納める場合の手続について、司法書士は代理できます。ここでいう「登記」には、不動産登記、商業登記(法人、会社等の登記)といった一般的な登記に加えて、船舶、工場財団、動産、動産債権譲渡等の登記が含まれます。司法書士の独占業務となります。(※弁護士は可)

② 法務局に提出する書類等を作成すること

 登記申請手続をする際には、委任状やその他必要な書類を添付しなければなりません。司法書士は、これら書類を作成することができます。こちらも、司法書士の独占業務となります。(※弁護士は可)

③ 裁判所、検察庁に提出する書類等を作成すること

 裁判所に提出する書類とは、訴状、答弁書その他準備書面、陳述書等の書類のことです。ここでいう裁判所とは、最高裁、高裁、地裁、家裁、簡裁を指します。また、事件の種類に制限はなく、民事事件、行政、刑事、家事等の全ての事件の書類を作成することができます。司法書士の独占業務とされています。(※弁護士は可)

④ 上記の手続について相談に応じること

 司法書士は、登記手続、裁判書類作成業務について、相談に乗ることができます。司法書士の独占業務です。(※弁護士は可)

⑤ 簡易裁判所における手続について代理すること

 司法書士は、簡易裁判所で執り行わる民事訴訟法(民事(私人間)の紛争手続について記した法律です)の規定による手続について代理することができます。簡単にいうと、簡易裁判所であれば、弁護士のように、依頼者の代理人となることができます。但し、要件があり、訴額(訴訟の目的等の価値の金額)が140万円を超えないものに限られます。

⑥ 民事に関する紛争について、相談に応じ、仲裁事件の手続又は裁判外の和解について代理すること

 司法書士は、簡易裁判所の手続に限らず、民事(私人間)の紛争解決のために、依頼者を代理することができます。但し、この場合も、簡易裁判所における手続と同様に、訴額が140万円を超えないものに限られます。

⑦ 管理人、管財人等の地位に就き、他人の財産の管理又は処分を行うこと

 司法書士は、例えば、相続手続において、相続人全員から依頼を受け、相続財産を管理し、相続人に適切に分配するといった遺産管理業務を行うことができます。また、遺言執行者や裁判所が選任する相続財産管理人に就任することもできます。

⑧ 成年後見人、保佐人、補助人等の地位に就くこと

 司法書士は、成年後見人、保佐人に就任することができます。

司法書士の使命・職責とは?

 司法書士の仕事は、上記のとおり、法令で定められており、その幾つかは、司法書士のみが業務として行える独占業務となっています。独占業務とされている理由は、これらの手続が、依頼者の権利擁護に密接に影響し、公正な社会実現に向けて大きく寄与するものである以上、法務大臣から資格を受けた司法書士のみが行うことが適切と考えられているからです。

司法書士の使命

 では、何故、司法書士のみが、こうした手続きを行えるのでしょうか。「司法書士法」では、第1条において、次のように定められています。

 

司法書士法第1条(司法書士の使命)

 司法書士は、この法律の定めるところによりその業務とする登記、供託、訴訟その他の法律事務の専門家として、国民の権利を擁護、もつて自由かつ公正な社会の形成に寄与することを使命とする。

 例えば、登記手続は、登記申請書を作成するという業務そのものは単純かもしれませんが、司法書士は、業務を行うにあたっては、その登記申請の原因となる事実が適正かどうかを確認します。単純に、申請書を作成するだけは終わらず、登記の前提となる行為やその結果について、しっかりと判断することが求められています。

 登記は、必ずしも、そこに記録することで権利を発生するものではありませんが、民法上の対抗力の観点から、登記を怠ると、不利益を被るおそれもあります。その意味で、国民の権利を守る大切な手続となっています。一方で、登記は、広く社会一般に向けて情報を公示することも、その主な役目となりますが、正しい情報を公示することは、公正な社会の実現に繋がります。

 また、上記の司法書士法以外にも、「司法書士倫理」という倫理基準が制定されています。「信義にもとづき公正、誠実に業務を行うこと」、「常に品位を保持すること」など、執務姿勢について細かく規定されており、各司法書士は、司法書士法と同様に、これを遵守しなければなりません。

 さらに、各司法書士は、毎年定められた研修を受け、単位を取得しなければなりません。研修では、実務上の知識はもちろん、倫理的な研修も義務とされています。

 司法書士に独占業務が与えられているのは、高い倫理観と、専門性をもった資格者のみが、それら独占業務をすることができるという国の判断によるものですが、各司法書士個々人も、上記の使命感を常に持ち業務をしなければならないのは言うまでもありません。