【司法書士】浜松市の行政区画変更【登記】

 令和6年1月1日より、浜松市の行政区画が変更されます。これまで7区あった区が3区に変更となります。

 以下は、浜松市のHPからの引用画像です。

 ところで、登記においては、登記名義人の住所等も記録されます。これまでは、もちろん「中区」、「東区」などで登記されているわけですが、来年1月以降、各区の名称が変更になった場合、住所の変更登記は必要となるのでしょうか。

行政区画変更における住所変更登記の要否

 

不動産登記

 不動産登記手続において、住所変更登記は不要です。

 不動産登記手続について定めた不動産登記規則第92条がその根拠です。

不動産登記規則

(行政区画の変更等)

第92条 行政区画又はその名称の変更があった場合には、登記記録に記録した行政区画又はその名称について変更の登記があったものとみなす。字又はその名称に変更があったときも、同様とする。

 登記官は、前項の場合には、速やかに、表題部に記録した行政区画若しくは字又はこれらの名称を変更しなければならない。

不動産登記規則

 第92条は、「表示に関する登記」について定めた節にありますが、権利に関する登記(所有権、抵当権などの登記)においても、同様に変更登記があったものとみなされます。

 但し、登記官が職権で変更するのは、表題部の不動産の所在のみであり、権利部の登記名義人の住所は、職権変更されません。したがって、どうしても、正式な今の住所を記載したいのであれば、ご自身で申請するしかありません。なお、登録免許税が非課税となっております。

 権利部の登記名義人の住所は、職権変更されないものの、変更があったとみなされるため、住所変更登記は不要ですが、あくまでも、行政の都合で変更があった場合で、かつ、地番の変更が伴わない場合のみですので注意が必要です。

 例えば、登記記録上の住所が「浜松市中区助信町」であった人が、自己都合で令和5年11月に「浜松市中区新津町」に住民票を異動していた場合、住所変更登記は必要となります。詳しくは、以下の投稿にてもご説明しておりますので、合わせてご覧下さい。

 『所有権の住所変更登記、氏名変更登記の申請方法』

商業登記

 商業登記手続においても、同様に、本店の住所変更登記は不要です。

 さらに、役員の住所も登記官が職権で変更しますので、役員の住所変更登記も不要です。

 

商業登記法

(行政区画等の変更)

第26条 行政区画、郡、区、市町村内の町若しくは字又はそれらの名称の変更があつたときは、その変更による登記があつたものとみなす。

商業登記法

 

商業登記規則

(行政区画等の変更)

第42条 登記簿に記録された行政区画、郡、区、市町村内の町若しくは字又はそれらの名称の変更があつたときは、登記官は、登記簿にその変更があつたことを記録することができる。

商業登記規則

 行政区画変更に伴うその他事項

 、

令和6年1月1日以降に取得する登記簿等

 登記官による表題部の職権変更手続は、1月1日に自動的に完了するわけではなく、順次変更されていき、浜松市全域の変更が完了するまで約8カ月かかるといわれています。そのため、1月1日以降に法務局で不動産登記簿を取得すると、表題部の不動産の所在が、新区に移行前の、例えば「中区」などで表示されているかもしれません。

 この場合も、先の不動産登記規則第92条第1項により、変更登記があったものとみなされますので、取得した登記簿謄本の効力に影響はありません。これは、公図や建物図面についても同様です。

権利証の住所

 権利証(登記識別情報通知又は登記済証)の住所は、そもそも変更することができません。これまでも、住所を移転し、住所変更登記をしても、権利証記載の住所は、旧住所のままでしたが、新区移行の際も同様です。権利証に旧住所が記載されていても、その効力には何ら影響はありません。

オンライン申請

 これは、一般の方はあまり関係ない話かもしれませんが、オンラインで登記を申請する際に、「中央区」等の新区で不動産の所在地を記載すると、仮にその不動産の表題部が職権変更される前の「中区」等だった場合、エラーが出て補正となる可能性があります。よって、面倒でも申請直前に登記情報等で不動産を確認するのが無難かもしれません。これは、オンラインで謄本等を請求する際にも同様です。