【司法書士】所有権の住所変更登記、氏名変更登記の申請方法
住所変更登記・氏名変更登記の義務化
令和3年4月21日の参院本会議で可決された相続登記の義務化に伴い、住所・氏名変更登記(所有権)も5年以内に義務化されることとなりました。これまで、住所変更登記等は、義務ではなく、実際に住民票を移動しても、登記をする必要はありませんでした。しかし、将来においては、この住所変更登記等を、住所変更日等から2年以内に申請しなければならず、これを怠った場合は、5万円以下の過料に処せられます。
住所移転日等から2年以内というスパンであるため、余裕があるようにも見受けられますが、「後でいいや」と考え、放置してしまうと、忘れてしまうことも考えられます。忘れたころに、過料の通知が来て、ゾッとする方が意外と多く発生する気がします。
そのため、今後は、住所等を変更した場合には、面倒でも登記を申請することをお勧め致します。登記は、私のような司法書士に依頼しても構いませんし、ご自身で申請することも可能です。前回抵当権の抹消登記の申請方法をご紹介しましたが、住所変更登記等は、その抵当権抹消登記よりもさらに簡単に申請することができます。
住所変更登記の手続き
登記には、共同申請と、単独申請の2つがあります。共同申請とは、抵当権抹消登記のように、抵当権者である金融機関と不動産の所有者が一緒に申請する方式を指します。単独申請とは、まさにこの住所変更登記等のように、不動産の所有者等が単独で手続きできる申請のことです。
意味合いとしては、ある権利に関わり、一方の手続だけでは、他方の権利が損なわれる可能性がある場合に、共同申請が用いられます。例えば、抵当権抹消登記を不動産の所有者が単独にて勝手に申請してしまうと、金融機関の権利が損なわれますよね。
他方、単独申請は、単独で申請しても、他の権利を損なわない場合などに用いられます。所有権の住所変更登記を申請しても、誰も困りませんし、実態上、既に住所を変更しているわけですから、それを公示する必要があるのは当然です。
したがって、単独申請である所有権の住所変更登記を申請する場合には、委任状は必要ありません。自分で自分に委任することはできません。抵当権抹消登記の場合は、共同申請の一方である金融機関から委任を受けた立場と、不動産の所有者であるご自身が一緒に申請をするため、委任状が必要だったのです。
住所変更登記で必要な書類は以下のとおりです。
住所変更登記で必要な書類は、大抵は上記のものだけで足ります。
法人の場合は、登記事項証明書が、個人の場合の住民票などに該当します。しかし、最近はオンライン化が進んでいますので、申請書の申請者欄に会社法人等番号を記載すれば、登記事項証明書を添付することすら不要です。
上記のうち住民票は説明が要らないと思いますが、戸籍附票とは、住所の変遷が分かる戸籍関係書類で、住民票と同様に市町村役場で取得できます。例えば以下のような事例の際に用います。
ところで、住所変更登記には、登記が不要な場合もあります。以下のような場合です。
浜松であれば、1の行政区により住所が変更となった場合が見られます。この場合、住所変更登記は必要ありません。一方、区政施行等が伴う場合でも、以下のような場合には、住所変更登記が必要となります。
なお、3はレアケースですが、登記記録上の住所に戻ってきた場合も住所変更登記が不要となります。しかし、今後は2年以内に住所変更登記を申請しなければならないことを鑑みると、このようなケースが発生することはあまりないかもしれません。
いずれの場合も、住所変更登記が必要となります。あくまでも、区制施行を伴う場合において、住所変更登記をしなくてもよいのは、住所に「中区」、「東区」などが追加されただけの場合です。それ以前や以後にご自身で住所を変更している場合は、住所変更登記が必要となります。
また、2の住居表示の場合も、行政の都合ではありますが、住所変更登記が必要となります。浜松においては、住吉などは①のように〇丁目と記載されますが、船越などは〇丁目の記載がありません。しかし、住居表示が実施されていますので、住所変更登記が必要です。
ご自身の住所が住居表示実施区域かどうかは、市町村役場に問い合わせれば判明します。浜松であれば協働センターでも教えてくれます。
3の場合ですが、町名だけの変更であれば、住所変更登記は不要ですが、町名の変更に伴い、地番も変更された場合は、住所変更登記が必要となります。
氏名変更登記の手続き
氏名変更登記の手続きも住所変更登記と全く一緒です。したがって、必要書類は以下のものになります。
戸籍謄本には、婚姻日、離婚日又は養子縁組日が記載されますので、それにより氏の変更があったことが判明します。
会社の場合も、履歴事項証明書などに商号変更日が記載されています。しかし、前述のとおり、会社法人等番号を申請書に記載すれば、添付不要です。
申請書の綴じ方
申請書は、以下のように綴じて法務局に持参します。
印紙貼付台紙とは、登録免許税である収入印紙を貼り付ける用紙です。A4の用紙に「印紙貼付台紙」とでも記載すればよいでしょう。申請書とその印紙貼付台紙を割印します。申請書が数葉に渡る場合は、その全てと印紙貼付台紙まで割印します。
法務局には、住民票等の公的書類の原本を提出しなければなりません。原本は、法務局で回収されてしまいますが、コピーを別途添付し、そのコピーに上記のように「原本相違なし」と記載し、申請書に押印した認印で押印し、一緒に提出すれば、原本を返却してもらうことができます。
登録免許税は、不動産1個につき1,000円です。不動産が3つであれば、3,000円となります。マンションの場合、敷地権(土地)の数も加算されます。例えば、建物1敷地権3の場合は4,000円です。
なお、住所変更登記においては、非課税となる場合も多くあります。例えば、以下のような場合です。
1は行政の都合上住所が変更された場合です。登記は申請する必要がありますが、非課税とされています。
2は最後の変更が行政の都合によるものの場合です。この場合も非課税となります。
こうした場合、申請書に非課税となる登録免許税の根拠条文を記載する必要があります(例えば、「登録免許税法第5条第5号」など)詳しくは、その都度司法書士又は法務局にお尋ね下さい。
住所変更登記は、奥が深く、前述の非課税措置などもあり、そうした場合には、むしろ司法書士に依頼した方が実は楽かもしれません。しかし、申請自体は単純ですので、最も単純な申請(1回だけ引っ越した場合など)であれば、ご自身で申請してみてもよいかもしれません。ご不明な点があれば、当事務所にご相談下さい。
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