【浜松市】信託銀行の株式の相続手続【司法書士】
先日のブログで、上場株式の相続手続についてご説明いたしました。その際に、信託銀行の株式相続手続について、残高証明書を取得する際の注意点などを述べましたが、この投稿では、証券会社の手続に比べて複雑な印象のある信託銀行にある株式の具体的な相続手続についてご説明いたします。
信託銀行の株式の相続手続
1.株式の特定
信託銀行の特別口座に株式がある場合に、まず行うべきことは、株式を特定することです。信託銀行の場合、証券会社と異なり、必ず、相続人側がご自身で株式を特定する必要があります。どの株式があるかが分からず、信託銀行の相続センターに問合せをしても、手続は進みません。
例えば、毎年、三井住友信託銀行から、〇〇株式会社関係の資料が郵送で届くとします。例えば以下のような封書です。
この封書から判断できることは、被相続人がエネオスの株式を所有していた事実のみであって、エネオス株がどこの証券会社又は信託銀行にあるかまでは分かりません。といっても、証券会社からの定期的な残高の通知書などにより、被相続人がどこの証券会社を利用していたかは判断できることが多く、そこにエネオス株の記載があれば、その証券会社の特定口座にあることが分かります。
仮に、証券会社は分かっていても、通知書などもなく、エネオス株がそこの証券会社にあるかどうかが判明できない場合は、その証券会社に対し、残高証明を請求することで、証券会社の特定口座内にある株式全てが判明します。特にネット系の証券会社においては、定期的な残高の通知書がないことも多いため、残高証明を請求することとなるでしょう。
問題となるのは、証券会社に対し、残高証明を請求したところ、エネオス株の記載がなかった場合や、そもそも、被相続人がどこの証券会社を利用していたか分からない場合です。こうした場合には、まず、エネオス株がどこにあるかを確認するところから始めなければなりません。
証券保管振替機構(以下「ほふり」といいます。)という組織があります。ここに照会することで、被相続人の株式口座がどこにあるかが分かります。詳しい説明は、先日の投稿に記載してありますので、そちらをご覧ください。
ほふりにより、被相続人の口座が判明した場合には、その口座管理会社、つまり証券会社か信託銀行に対し、残高証明の請求を行います。これは、証券会社であっても、信託銀行であっても変わりません。いずれかの口座にエネオス株があることが判明するはずです。
まず、各会社の相続手続センターに電話又はメールにて問い合せをします。電話の場合、なかなかオペレーターにつながらず、特に信託銀行においては、オペレーターに繋がっても、オペレーターより「一旦専門部署からの折り返しとなります。」と伝えられる場合があります。その折り返し電話も当日ではなく、2~3営業日後となることもあって、手続が面倒と感じるかもしれません。
残高証明を請求せずに手続を行う場合
証券会社の場合
例えば、先のエネオス株が、三井住友信託銀行の特別口座内又は証券会社の特定口座内にあることが、残高証明の請求をせずとも分かっていた場合を考えます。
証券会社であれば、あえて残高証明を請求しなくとも、証券会社側で特定口座内にある株式を全て明示してくれる場合があります。株式の取得は、特定の1人の相続人が全てを取得することが多いと思われますので(複数の相続人が銘柄毎に取得することも可能ですが、手続が煩雑となることから、多くの場合、1人の相続人が株式全部を取得し、他の相続人は代わりに預貯金などを相続するといった遺産分割協議を行うことが一般的です。)、その相続人が証券会社の窓口に問合せをし、「全ての株式を自分が取得するので、残高証明と相続書類を送って欲しい。」とオペレーターに伝えれば(念のため、残高証明も一緒に請求した方がよいでしょう。)、全ての銘柄の残高証明と相続書類が送られてきます。多くの場合、その相続書類には、その証券会社の特定口座内にある株式銘柄が全て印字されています。
株式の銘柄全てが判明する前に手続を行う場合の注意点
証券会社に対し、株式の手続をする際には、遺産分割協議の提出を求められる場合があります。遺言書があれば、もちろん、遺言書を提出します。
遺産分割協議は、相続人間で、遺産の帰属先を決める合意のことです。したがって、本来、遺産全てが判明していることが協議の前提となりますが、ご家庭によっては、あまり、細かく協議せずに手続を行いたいという場合もあります。
証券会社の場合、株式の銘柄全てが判明していない場合であっても、先に手続ができる場合もありますが、残高証明の請求をかけ株式銘柄全てが判明した後に遺産分割協議及び証券会社に対する相続手続を行うのが、本来の手続となります。
信託銀行の場合
次に、エネオス株が三井住友信託銀行の特別口座にあることが、残高証明の請求をせずとも分っていた場合ですが、エネオス株のみが三井住友信託銀行にあることが間違いないのであれば、相続センターに電話をし、被相続人の名前、住所、エネオス株がある事実を伝え、相続書類の送付を希望すれば済みます。
しかし、相続人が知らない株式が、同じ三井住友信託銀行の口座にある可能性もあります。ある一つの銘柄が信託銀行の特別口座にあるのであれば、他の銘柄もある可能性を疑うべきかもしれません。
よって、信託銀行の場合は、まずは残高証明を請求することから始める方がよいでしょう。信託銀行の場合は、冒頭で述べたように、相続人側で株式銘柄を特定する必要があるため、「エネオス株が特別口座にあるため、その相続手続書類を送って欲しい。また、他の銘柄があるかもしれないので、一緒に書類を送って欲しい。」と伝えても、他のあるかもしれない銘柄の手続はできません。まず先に残高証明請求書の送付を依頼し、その請求書を必要書類と一緒に信託銀行に返送し、株式全てが特定された後に、相続書類の送付を希望されるほうが宜しいかと思います。ただし、株式が特定された後にまた問合せをして、今度は相続手続書類の送付を依頼しなければならないこと、信託銀行による残高証明の発行は1か月程度の時間を要することは理解されておくべきかもしれません。
証券保管振替機構(ほふり)に調査をしてから手続を行う場合
実は、信託銀行に残高証明を請求するのであれば、先にほふりに照会をかけた方が良いかもしれません。
もし、ほふりに照会をしてから手続を行うのであれば、ほふりの照会結果には、証券会社の特定口座及び信託銀行の特別口座の番号が記載されています。
信託銀行の特別口座は、証券会社の特定口座のように、複数の銘柄を管理している口座ではなく、1銘柄毎に1つの特別口座で管理されています。
仮に、ほふりの照会結果に、三井住友信託銀行の特別口座が3件記載されている場合、3銘柄が三井住友信託銀行の特別口座に存在することとなります。
したがって、先のエネオス株以外の不明な2銘柄が三井住友信託銀行の特別口座にあることとなります。
何度も言いますが、信託銀行の場合は、相続人側で株式を特定する必要があります。不明な2銘柄を特定するためには、まず残高証明を信託銀行に請求しなければなりません。ほふりに対する照会も、信託銀行に対する残高証明と手間的には同じですが、それでも、ほふりに調査をかけることで、信託銀行の特別口座の数が効率よく判明するため、上手くほふりを利用すれば、手続をスムーズに進めることができます。
2.具体的な相続手続
信託銀行の相続手続は、簡単に言えば、信託銀行の特別口座内にある株式を、取得する相続人が指定した証券会社の特定口座に移管することです。そのための三井住友信託銀行の手続書類は、以下のようなものとなります(令和7年時点のものですので、今後仕様が変更となる場合もあります。)
共同相続人同意書には、株式の承継内容と相続人の署名押印欄がありますが、実印を押印した遺産分割協議書に特定の相続人1名が株式を取得することが明示されていれば、相続人の署名押印は、取得する相続人だけで済みます。遺産分割協議書が無ければ、相続人全員が署名押印する必要があります。
右下の株式配当金受取方法の欄は、いわゆる遺産に属する未払配当金の受領方法についての項目です。株式自体と未払配当金は、異なる遺産のため、遺産分割協議書上で、未払配当金も株式を取得する相続人が取得する旨の記載があれば、銀行振込かゆうちょ窓口で現金払いかを選び、この欄を記入します。
もし仮に、遺産分割協議書上に未払配当金についての記載がない場合は、相続人欄に全員の署名押印が必要になると思われます。
口座振替申請書(実際に使用したものなので、目隠しが多く見ずらく申し訳ありません。)には、取得される相続人が署名押印(実印)し、移管先の証券口座を記入します(なお、画像では、私の名前が相続人欄に記入されていますが、これは、私が代理で手続したからです。)
信託銀行は、他に三菱UFJ信託銀行やみずほ信託銀行などがありますが、どこの書類も大きく変わりはありません。但し、未払配当金がある場合の記載方法は、各信託銀行によって異なるので注意が必要です。
例えば、三井住友信託銀行の場合は、未払配当金専用の書類が存在します。一方で、三菱UFJ信託銀行においては、上記のような相続人同意書に未払配当金を記載すればよく、いずれにしても、判断に迷う場合があれば、都度、各信託銀行の記載方法につき問合せをした方がよいでしょう。
私も、実際、都度オペレーターに問合せをしながら記入しています。
最後に、株式は平成21年1月5日に電子化され、紙の株券は全て無効化され、証券会社を通じてほふりに預託されていない株券を保有していた株主の権利を保全するために、信託銀行において特別口座が開設されました。
そのため、平成21年1月4日以前に開始した相続による株式の移管手続は、若干、上記の手続とは異なります。しかし、15年以上経った今日においてはレアケースだと思いますので、ここでは説明いたしません。
くわはら司法書士事務所では、こうした株式の遺産承継業務の依頼も受けております。株式の承継手続は、面倒なことも多く、相続人にとってかなりの負担となります。当事務所にご依頼頂ければスムーズに株式の相続手続をさせて頂きます。
| 事務所名 | くわはら司法書士事務所/くわはら不動産 |
| 英文事務所名 | Kuwahara Shiho-shoshi lawyer Office/Kuwahara real estate |
| 代表者 | 桒原徹(桑原徹) |
| 所在地 | 〒430-0911 静岡県浜松市中央区新津町245番地の1 |
| TEL | 053-460-8256 |
| 宅地建物取引業免許証番号 | 静岡県知事(1)第14911号 |
| 営業時間 | 平日9時~17時(土日祝時間外も対応可能です) |
| 業務内容 | ・不動産仲介 ・相続手続全般 ・不動産登記 ・商業登記 ・債権動産譲渡登記 ・成年後見 |





