株式会社の定款、機関設計見直しのススメ

取締役会

 浜松市に限らず、地方都市には、たくさんの中小企業が存在します。多くは家族経営であり、特に、昭和期から存在する歴史ある会社においては、役員の全員が親族であることも珍しくありません。

 こうした家族経営会社では、株主=経営者であることが通常であり、いわゆる上場会社のように取締役会や監査役を置くメリットは、ほとんどありません。上場会社では、株式を保有する株主は、よほどの大株主でない限り、経営に携わることはできず、信頼する取締役に経営を委任することとなります。適正、適切な経営を行うためにも、取締役は複数選任され、さらに、経営を監査する監査役も設置されます。会社運営の観点からも、経営の意思決定に際し、都度、株主総会を開催し、決議を株主に諮って行うのは、迅速な会社運営を損ない、迂遠に過ぎるため、取締役会を設置し、取締役の過半数の決議をもとに、会社を運営していくのです。

平成18年5月1日会社法以前に設立された会社の機関

 ところで、取締役、監査役、取締役会などを、「機関」といいます。

 平成18年の会社法施行以前は、全ての株式会社において、取締役会、監査役が必須機関とされていました。しかし、会社法施行によって、この義務は改められ、株式会社の多くを占める一般的な家族経営の会社においては、設置する義務はなくなりました。同時に、監査役についても、あえて置くのは自由ですが、設置義務はなくなりました。

 なお、取締役会及び監査役を設置すべき会社は以下のとおりです。

取締役会を設置すべき会社監査役を設置すべき会社
公開会社(譲渡制限規定がない※)取締役会設置会社(委員会設置会社除く)
監査役会設置会社会計監査人設置会社
委員会設置会社

※譲渡制限規定とは、全ての株式について、譲渡する場合に、会社の承認を要する旨の規定のことです。通常の中小企業においては、ほぼ100%、この規定が存在します。よって、公開会社ではなく、取締役会設置の義務はありません。

 このように、ほとんどの家族経営会社においては、取締役会や監査役を設置する必要はありませんが、昭和、平成初期に設立した会社では、今も取締役会及び監査役を設置していることが良く見られます。

 これは、会社法施行時に、施行以前から存在する株式会社には、必ず取締役会と監査役の設置が義務づけられていましたが、施行時に特段の手続を行わず、施行から17年経た現在もそのままの機関設計になっているためです。

 

平成18年5月1日会社法以前に設立された会社の状況

 前述のとおり、会社法施行時、特段何かの手続きが求められたわけではありません。

 そのため、会社法施行以前から存在する会社では、現在も、会社設立時の古い定款を、そのまま変更せずに使用していることも珍しくありません。本来、定款とは、会社の運営に伴い、都度、その内容を株主総会で決議し、変更していくものですが、きちんと変更している会社は多くないのが実情です。

 古い定款のままだと、現在の会社内容と異なる規定が設けられていることも考えられますし、役員の任期のように、古い規定に縛られてしまっている状況も考えられます。

 既に、巷でも周知されておりますが、現在、取締役の任期は、譲渡制限規定を設けている株式会社であれば、最長10年まで伸長することが可能です。10年任期にすれば、10年毎に登記すればよいわけですが、概して、古い定款には、役員任期が2年と定められているため、それを変更していない場合、2年毎に登記手続を行わなければなりません。

 また、取締役会を設置するということは、必ず3名以上の人数が必要となり、取締役とは別に監査役としての人材も確保し続けなければなりません。ほとんどの会社では、親族が取締役及び監査役に就いており、多くの会社では、人材確保に当座のところ問題があるわけでもないため、そのままにしています。

 もちろん、会社経営上、取締役を2年毎に改正すること、取締役会及び監査役を設置することが、その会社にとって適切だという判断であれば、そうすべきですが、必ずしもそうではなく、今までそうだったからという理由から、変更せずにそのままにしているように見受けられます。

 

機関の変更

 もし、ご自身の会社が、平成18年以前から存在する会社で、株主と取締役が同一であり、また、会社経営上、取締役会や監査役を設置する必要性がないとご判断される場合には、現在の会社に適した内容に改められる方が、より柔軟で迅速な会社運営が可能となる場合があります。また、2年毎に役員改選をし、登記手続を行う必要もなくなります。

 一例として、具体的には、以下のとおりに定款及び登記記録を変更します。

 

変更前変更後
取締役会あり取締役会廃止
監査役あり監査役廃止
監査役の会計限定の定め監査役の会計限定の定め廃止
譲渡制限承認機関は取締役会譲渡制限承認機関は株主総会等に変更
監査役A監査役A退任
取締役B取締役B
取締役C取締役C
取締役D取締役D
代表取締役B代表取締役B
取締役は3名以上取締役は1名以上
役員任期2年役員任期10年

 監査役は、監査役設置の定めを廃止すると、自動的に任期満了退任となります。

 また、上記では、元の取締役BCDが、そのまま、変更後も取締役となっておりますが、例えばCが同時に辞任し、変更後は、取締役2名体制とすることも可能です。また、監査役Aを取締役として新たに選任することもできます。

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