【司法書士】抵当権抹消登記の申請方法
抵当権抹消登記の手続き
通常、金融機関等で住宅ローン等の借入をされると不動産に抵当権が設定されますが、借入を全額返済すると、その抵当権を抹消することができます。その際、一般的には、金融機関が司法書士を紹介することが多いかと思いますが、抵当権抹消登記をご自身で申請することも可能です。また、遠方の金融機関や住宅金融支援機構(フラット35)などは、司法書士を紹介することはせず、抵当権抹消に必要な書類を送付するにとどまる場合もあります。こうした場合は、司法書士を直接探すか、ご自身で申請することとなります。
ここでは、ご自身で申請する方のために、抵当権抹消登記の申請方法を説明します。通常、司法書士に依頼すると、地域により差はあるかと思いますが、登録免許税(不動産1個毎に千円)にくわえ、1万円~1万5千円程度を基本とし、不動産の数毎に千円づつ程度加算された報酬が発生します。その他に、登記記録の確認費なども発生しますので、土地1建物1の一般的なマイホームにおける抵当権抹消登記であれば、総費用は2万円程度となります。自分で申請されれば、2、3千円程度で済みますから、チャレンジして頂くのもよいかもしれません。抵当権抹消登記は、登記の中でも最も簡略な登記であることもあって、ご自身でも、時間の余裕さえあれば、申請できるかと思います。
なお、本稿の一番最後に、抵当権抹消登記における注意点を記載してありますので、そちらも合わせてご覧下さい。
抵当権抹消の必要書類
1の抵当権解除証書は金融機関によって書類名が異なる場合(単に「解除証書」など)もありますが、通常以下のようなものになります。一般的な金銭消費貸借契約に基づく抵当権の解除証書ですが、これ以外にも保証会社が関係する場合の書式などもあります。その場合には、都度、お問合せ下さい。
金融機関等が一般の方に送付する場合には、既に書類として完成されていることも多く、そのまま使える場合もありますが、金融機関によっては、日付等が空欄のままの定型の書式を送付する場合もあり、ご自身で必要事項を記入する必要があります。こうした場合においては、登記事項証明書を取得していただくことが必須となります。なお、この抵当権解除証書を確認するうえで注意すべき点は3つです。
ご自身で記入する場合に、間違わないように慎重に記入して下さい。金融機関のこうした書類は、捨印がないため、修正ができず、いきなりボールペン等で書き、それが間違っていると、最悪、再度書類を送付してもらわなければなりません。再発行を依頼する手続は面倒なことが多いです。自信がなければ、まずは鉛筆で書き、司法書士や法務局に行き、見てもらうのがよいでしょう。
なお、この抵当権解除証書は、原本を提出する必要がありますが、コピーも一緒に提出し、そのコピーの右端の余白あたりに、「原本相違なし。住所、氏名」と記載し、申請書に押印する認印を押印することで、法務局から原本を返却してもらうことができます。原本を今後使用することはないかもしれませんが、もしご心配でしたら、そのようにコピーを添付してもよいでしょうし、またそれが面倒であれば、コピーの方をご自身で保管しておけば後日の確認資料としては十分でしょう。
2の委任状ですが、金融機関等より次のような書類を受領するはずです。
緑枠部分の日付は、空欄であれば記入します。ここの日付は、抵当権解除証書という書類の作成日を指します。「〇年〇月〇日に作成された抵当権解除証書という書類に基づく登記を委任する」という意味です。上記画像のように、抵当権解除証書の日付欄が1つの場合は、その日付を記入すれば構いませんが、弁済日(解除日)と別に書類作成日が抵当権解除証書の右上等にある場合は、その右上等にある書類作成日の日付を記入する必要があります(おそらく、そのような場合は、金融機関等によって記入されていると思いますが)。
青枠部分の日付は、抵当権者である〇〇〇〇株式会社より、ご自身が抵当権抹消登記申請の委任を受けた日を意味します。
抵当権解除証書の日付が一つ(又は2つであっても同日)の場合は、抵当権解除証書と同じ日にすればよいでしょう(解除証書より先の日付は×です)。抵当権解除証書の日付が2つあり、同日でない場合、つまり抵当権解除証書の書類としての作成日があとの日付の場合は、その書類作成日と同日にします。
また、詳細は省きますが、書類受領後、数年後に登記を申請することもあるかもしれません。その場合の委任日は、申請するその数年後の日ではなく、前記同様に、抵当権解除証書と同じ日付又は抵当権解除証書の作成日にしてください。
赤枠部分ですが、ここには、ご自身の住所氏名を記入します。受任者(つまり委任をうけて登記を申請する人=ご自身)を書く欄です。ボールペンで記入しますので、最初は鉛筆で書かれた方がよいでしょう。
3の権利証ですが、3つの形式があります。どの形式であっても、とりあえず、法務局に申請する際に、一緒に提出すると覚えておけば大丈夫です。本当は、提出方法も所定の方式があるのですが、一般の方であれば、そこまで気にしないでも大丈夫でしょう。
左(スマホでは上)が古いタイプ、右(下)が新しいタイプです。書類の下部に、パスワードが記載されています。ここに貼られている目隠しシールを剥がして、A4でコピーを取り、パスワードが見える形で持参します。原本は、今後使用されることはないでしょうが、当座のところ保管しておけばよいでしょう。
平成19年位から平成21年位までの初期型?の登記識別情報通知ですが、目隠しシールが剥がしにくく、上手く剥がすにはコツがいります。剥がしていて汚くなってしまうかもしれませんが、とにかく、シールに隠れているパスワードが分かれば問題ありません。重要なのは、この用紙ではなく、パスワードです。
もう一つ、昔の「登記済証」と呼ばれるも形式があります。長方形の朱肉によるハンコで、漢数字で「〇年〇月〇日登記済」と押印されています。このハンコ部分がまさに肝です。抵当権の抹消の場合は、金融機関から返却される抵当権設定契約証書などの書類に押印されていることが通常です。登記識別情報通知が受領書類の中になければ、必ず代わりに登記済証(抵当権設定契約証書等に登記済のハンコ)があるはずです(一部オリックスの根抵当権などの例外はありますが、住宅ローンの抵当権においては権利証がない話は聞いたことがありません)
登記済証の場合も、これを申請時に一緒に提出します。この登記済証は返却してもらうことができます。コピーも不要です。浜松であれば平成19年12月17日に、登記識別情報通知に切り替わりましたので、借入日がそれ以前の場合は、この登記済証があるはずです。
4つめの申請書ですが、これは法務局又は法務省のHPから様式をダウンロードできます(ワード又はPDF)。記載例もありますから、ワードをダウンロードし、あとはそれに自分の名前や不動産などを記載すればよいでしょう。マンションの場合の記載例もあります。検索は、「法務省 抵当権抹消」や「法務局 抵当権抹消」とすれば、一番トップに出てくるはずです。
申請書は、仮に間違いがあっても、二重線等で訂正もできますから、あまり悩まず記載して大丈夫です。手書きの場合は、もちろんボールペンで記載します。
申請書が完成したら、全部まとめて、ホッチキスでとめ、法務局に持参します。順番は①申請書②印紙を貼る用紙(A4の紙。なんでもいいです。表題として「印紙貼付台紙」とでも記載しておくとよいでしょう)③抵当権解除証書(原本又はコピー)④委任状、ここまでを合綴します。①から②まで割印します。
③の抵当権解除証書は、コピーを提出する場合は、コピーを③で合綴し、原本は別にクリアファイル等に入れて提出します。この際、登記識別情報又は登記済証もクリアファイルに入れて提出するとよいでしょう。
申請書には申請人(つまりご自身)が認印で押印しますが、その認印で②の印紙を貼る用紙まで割印します。以下のようなイメージです。
収入印紙ですが、法務局には、併設の印紙売場がありますので、そこで必要な額の印紙を購入し、印紙貼付台紙に貼付します。不動産1個につき千円ですので、建物1土地2の場合は、3千円かかります。マンションにおいて、敷地権が所有権の場合は、その敷地権となっている土地についても千円かかります。例えば、建物(マンション)1、敷地権(所有権)2の場合は、3千円となります。
ちなみに、法務局には通常コピー機はありませんので、コピーなどをされる必要がある場合は、事前にコンビニ等に立ち寄る必要があります。たまに、法務局でコピー機の場所を尋ねている方がいます。
最後に、抵当権抹消登記をご自身で申請する上での注意点をお伝えします。登記は、原則、発生順の登記していくこととなっており、例えば、借入から数年後に住所を移転されている場合は、抵当権抹消登記の前に住所変更登記を申請する必要があります。また、婚姻等で氏名が変更している場合も同様です。このような場合に、住所変更登記や氏名変更登記をしないで抵当権抹消登記を申請すると、登記が却下されますのでご注意下さい。なお、行政区等で最終の地番に変更がない場合等は住所変更登記は不要です。浜松市の場合であれば、登記上は「浜松市新津町〇〇番地」となっている場合、本来は「浜松市中区新津町」ですが、この場合には住所変更登記をする必要はありません。複雑な事例等の場合は、司法書士にご相談下さい。
住所変更登記や氏名変更登記をご自身で申請する方のために、また後日その方法を投稿します。
“【司法書士】抵当権抹消登記の申請方法” に対して1件のコメントがあります。
コメントは受け付けていません。